Pioneer carrozzeria サイバーナビ AVIC-ZH07 HDD修理

投稿者: | 2021-08-05

さて今回は珍しい、カーナビの修理です。
機種はPioneer(carrozzeria)のサイバーナビ、AVIC-ZH07です。
2011年モデルで、サイバーナビシリーズでは下位モデルになるでしょうか。

症状はというと、画像の通りでロゴ画面でフリーズして起動しない、というものです。
音を聞いていると、HDDのアクセスがリトライを繰り返している雰囲気なので恐らくHDDでしょう。

友人の車両についていたナビですが、このZH07は結構故障が多いようですね。
ロードクリエイターが悪さをしている感じで、HDDアクセスが増えるのもあるのでしょう。

さて、サイバーナビのHDD交換については、SSD換装を含めて相当数試行された方がおり
情報も多く助かります。ただ、情報があるからといって実行できるかというと・・・。

その大きな壁の一つが、ATAパスワードの存在です。
このZH07だと、HDDはATAPI(PATA)の80GBが搭載されています。
しかし、HDDに何らかのロックを掛けないと地図データをコピーされてしまうために、ATAパスワードが掛けられています。ATAパスワードはHDDの制御側でロックされるため、解除は困難です。

方法はいくつかあり、

1.ATAパスワードを解除するソフトを使用する
→A-FF Repair Stationを使用する(有料、$50/1回)

2.ホットスワップ法
→ナビでHDDを起動し、電源を維持したままPCに接続してデータを読み出す

3.富士通法
→とある古い富士通のHDDと、古いIntelチップセットのPCでATAパスワードを解除する

といったものです。
私は昔にもサイバーナビのAVIC-ZH9MDを修理するため、3.の手法を使用しています。
今回も、3.の富士通法で試行することにしました。

まずは分解します。天板は特にネジ止めありませんので、マイナスドライバーでこじればOKです。
続いて、ディスクドライブユニットがネジ4本で固定されているので外します。
これで、HDDが見えるようになります。

HDDは専用のマウンタに固定されて、マウンタが本体に4箇所のネジで固定されています。
まずはマウンタと本体の固定ネジを外し、HDDを取り外します。
あとはサイドのテープ2枚と、裏面でネジ4本固定ですので、取り外せばHDDのみになります。

こちらが取り外したHDDです。
Western Digital WD800BEVE(2.5インチ/ATA100/80GB/8MB/9.5mm/5400rpm)
普通に検索すれば出てくる、至ってフツーのモデルのようです。
昔のZH9MDでは、通常ではないモデルだったような気がしますが、もう忘れました(笑)。

そもそも、ZH9MDの時は東芝のHDDばかりでしたね。
話はそれますが、PATAの時代のLet’snoteも東芝のHDDで、特注品でしたね。ピンカットとか懐かしい。

さて、富士通法でATAパスワードを抜かなければいけませんので、とりあえず古いHDDをナビに取り付けます。
マウンタにセットし(ネジ止めはしなくてもいい)、ナビにもセットします。

昔からお世話になっているのはこのHDDです。
富士通 MHK2060AT (2.5インチ/ATA66/6GB/512KB/9.5mm/4200rpm)
この古いHDDは、ATAパスワードをHDDの制御基板に”平文で”保管しているため、特定のソフトで特定の手順を踏むと、HDDに掛けられたATAパスワードを読み出すことができます。

サイバーナビはHDDを接続すると、接続されたHDDに自動でATAパスワードを掛けてしまいます。
この特性を利用してATAパスワードを調べ、解除するというのが富士通法です。

PioneerのHDDナビは、以前のモデル(2003年付近など)では
1.ナビのHDDを取り外してメーカーに送付
2.更新されたHDDが返送されてくる
3.自ナビに返送されてきたHDDを差し込む
といった手順で地図更新を行っていました。そのため、かんたんにHDDの載せ替えができる構造だったためにコピー防止が強固だったのでしょう。
年式が新しくなると、ブレインユニットという名前で取り出せるものもありますが、新しくなればなるほど、取り外しできないものがほとんどです。しかし、手法は変えていないようですね。

なお、ATAパスワードにはMasterとUserの2つがあります。

これまでに触ってきた感じでは、ATAパスワードのMasterには機種ごとに決定されたパスワード、Userには個体ごとのパスワードが掛けられているようです。つまり前述のHDDを送付して更新する場合は恐らく、Userパスワードのみを解除した状態で送付されてくる(=同じ機種ならどの個体に挿しても動作する)が、一度どれかの個体に挿すと個体固有のATAパスワード(User)がナビによってHDDにセットされる(=その個体専用になる)という動作と思われます。
ただ今書いていて思いましたが、Masterパスワードで解除し、Masterパスワードを掛け直している、若しくはATAパスワードなしで返送されている可能性もありますね。もはやZH9MDなどは地図更新サービスも終了していると思われますので調べようもありませんが・・・。

この富士通の古いHDDを取り付けたら、仮組みして電源を入れます。

このHDDにはもちろん、データは何もありませんので、こんな画面等で再起動を繰り返します。
再起動を繰り返すだけで、何も変わらずずっと起動待機中です。

この画面を拝み、一度再起動したところでナビの電源を落とします。
この時点で、先程取り付けた古い富士通のHDD( MHK2060AT )にATAパスワードが掛けられています。

なお、ATAパスワードはMasterを解除すれば全て外れる(Userも)仕組みであるため、今回の目的ではMasterのみ分かれば良いわけです。

続いてこれまた古い、ノートパソコンを引っ張り出します。
わかっているのはIntelチップセットで、古めのもの(Pentium4以前なら多分大丈夫)、当然PATAが付いていて、FDD付きが望ましいです。
私がATAパスワード解除専用で愛用しているのは NEC Lavie LL700/2です。なんと2002年モデルです。頑丈ですね~。
この機種、結構便利なんですよ。右側にFDDと光学ドライブがありますし、フラットパッドとパームレスト部が一体で取り外せ、すぐそこにHDDが見えるというこのために生まれたような機種です(笑)。

先程ATAパスワードがかかったはずのHDD(MHK2060AT)を当PCにセットし、予め作成しておいた、FDで起動します。
このFDは、DOSの起動ディスクを作成し、その中にFUJTOOL.EXEとHDAT2.EXEを入れておいたものです。
このディスクを作成したのも10年近く前なのであまり覚えていませんが、日本語版の起動ディスクじゃないですね。どちらかのソフトが不安定になるのか、HDAT2が341KBと大きめで、日本語版だと容量が足りないのかは忘れました。

なお、FUJTOOL.EXEの入手先についてはお応えできません。多分どこかに落ちているので探して下さい。

DOSが起動し、A:\>のプロンプトが表示されたら”fujtool”を入力して、FUJTOOLを起動します。
するとHDDの選択画面が表示されますので、このPCの場合は1.Primary masterですので”1″を入力します。
(大体のマトモなノートパソコンであれば、起動用のHDDはプライマリのマスターです)
続いて、そのHDDに何するか?と聞かれますので、 r – Read block 、つまり”r”を入力します。
すると文字化けした入力待ちが表示されます。

この文字化けした入力待ちは、HDDのどのブロックを読み取るか、という事なので、まずは”12″と入力します。
Save CP Block 12 to 12.m, Status=OK と表示されたら成功です。
続いてSelect: とまた入力待ちになりますので、また”r”を入力し、文字化けの入力待ちが出たら”13″を入力します。
こちらも、 Save CP Block 13 to 13.m, Status=OK と表示されたら成功です。

ここまでできたら、Escキーを押してFUJTOOLを終了します。
すると、先程までは存在しなかった”12.M”と”13.M”というファイルが生成されています。
この”12.M”にMasterパスワード、”13.M”にUserパスワードが保存されています。

typeコマンドで、内容を確認します。
プロンプトに”type 12.M”と入力すると、内容が表示されます。
パスワード自体はお教えできませんが、このtypeで表示された文字列がMasterパスワードです。
文字列の頭や末尾に付いている、キーボード入力できない文字(下の画像で行けば、jp後の■など)はパスワードに含まれていません。文字化けです。
同じように、プロンプトに”type 13.M”を入力すれば、Userパスワードも確認できます。(意味はないですが…)

このパスワードをメモして、一度電源を切ります。

次は、やっとで調べたこのATAパスワードを使用して、ナビのHDDのATAパスワードを解除します。
ナビのHDDをPCに接続し、プロンプトで”hdat2″を入力してHDAT2を起動します。

ちょっと起動に時間がかかりますが、起動するとこんな具合です。このHDAT2は超優秀なツールです。
(HDDのクリッピングもセット、解除できますよ。)
HDDを上下キーで選択すると、DeviceNameの頭に赤いビックリマーク(!)が付いており、下部の情報欄にも赤いビックリマークが表示されています。
このHDDは今、セキュリティは”有効”かつ”ロックされた状態”で、SMARTでは”エラー”の状態であるという事がわかります。
このまま、Enterを押して次の画面に進みます。
(後撮り部分もあるため、機種名が変わったりしていますが気にしないで下さい。

すると、色々なメニューが表示されます。
下にスクロールし”Security Menu”を選択、Enterを押します。

するとセキュリティに関する設定が表示されます。
このHDDのATAパスワードを解除したいので、一番下の”Unlock device”を選択し、Enterを押します。

するとこのような画面になります。
Identifier:User は、解除するパスワードの種類を選択する部分です。
MasterとUser、どちらかに”I”キーで変更できます。
Password:” に、パスワードを入力します。

“I”キーを押してMasterに切り替え、”P”キーを押してパスワード入力部にプロンプトを移しました。
このまま、先程のATAパスワード(Master)を入力していきます。


入力しました。最後にEnterを押すと、HEX:には、入力したパスワードが16進数に変換されたものが表示されます。

続いて、”S”キーを押します。要は適用しますか?というメッセージで、下部にY/Nの入力待ちが表示されますので、迷わず”Y”を入力します。

下部に緑文字で”Command completerd successfully. Press any key…”と表示されたら成功です。
適当なキーを一度押します。

画面が戻りましたが、項目が減っています。
ATAパスワードが解除されたため、今このHDDに適用できる設定はパスワードの設定のみというわけです。
Security Statusもdisabledとなっています。

何度かEscキーを押し、最初のメニューに戻ります。
下部の情報欄を見ると、セキュリティのエラーは表示されていません。解除成功です。
今回の場合、DeviceNameの頭についていた赤いビックリマーク(!)はそのままですが、HDDがSMARTエラーを吐いている為です。HDDに異常がなければ、黄色いビックリマーク(!)若しくはなにも表示されていないはずです。

さて、これでHDDのATAパスワード解除が完了しました。あとは好きにするだけですね。
今回は、まずこのHDDをPCに接続し、”EaseUS Todo Backup”を使用してバックアップします。
バックアップ時には、セクタバイセクタで行います。

完了後、今回は同じHDD(イメージを吸い出した壊れかけのHDD)にバックアップイメージを書き戻します。

この作業によって、異常のあるセクタのデータを可能な限り読み出しを行いイメージ化、そして再度書き込むことでHDDのFW側で、代替セクタを使用して書き込んでくれるはず…。
HDDを交換する場合や、SSDに換装する場合は、このイメージを交換先のドライブに書き込めばOKです。

ドライブにイメージの書き戻しが完了したら、ナビにセットします。
おなじみのこの画面が表示され、再起動しました。

無事起動しました。めでたしめでたし!

なお、本来はHDDにエラーが出ている状態ですので交換しないと根本的解決はしません。
まぁ、延命処置なので今度壊れたらナビを変えることにしましょう。

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